
今回は元ネスレ日本のCEOの高岡浩三氏の講演について、まとめてみました。
目次
高岡浩三氏の講演メモ
講演タイトルは「デジタル・トランスフォーメーションによるイノベーション」
日本、世界のイノベーション、リノベーションを振り返り、市場の勝者・敗者を鋭く分析。
ネスレ日本の成功に貢献したマーケティング・フレームワーク「NRPS (New Reality Problem Solution」とは?
市場が混沌とする今、マーケティング、及びデジタルやAIを活用したイノベーション、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の重要性を語ります。-ワールドマーケティングサミットオンライン 高岡浩三氏のスピーカー紹介ページより
高岡氏のマーケティング定義"Marketing is the customer value creation by solving customers' problems"
過去の日本は世界でも時価総額でランキング上位に入っていく企業がたくさんあったが、
今ではその見る影がない。こうした状況を打破するためには、新しいマーケティングとイノベーションが必要。
そうしたマーケティング集団になるためには、わかりやすいマーケティングの定義が必要。
そのため、高岡氏は自身の体験をもとに紐解き、高岡氏なりのマーケティングを定義した。
誰しもが働いている顧客を想定しながら、その顧客がもつ問題を紐解きながら、その解決策を作っていく。
また、解決策を作ることで新しい付加価値を作っていく。
そのプロセスと活動すべてをマーケティングと呼ぶのが正しいのではないか。
リノベーションとイノベーション
・リノベーション→顕在課題
・イノベーション→認識されていない課題(解決できるはずがないと思っている問題)
企業のイノベーションは認識されていない課題(消費者自身もよくわかっていない)の解決を通じて起こりうる。
消費者自身もよくわかっていないため、イノベーションのタネは顧客の声からは直接出てこない。
高岡氏はイノベーション例として、エアコンを例にした。
うちわ(=風を手動で作るもの)から、扇風機(=風を自動で作るもの)へ
扇風機からエアコン(空間を冷やすもの)へ
エアコンがこれまでイノベーションであったように、今後エアコンに代わるものがでれば、それはイノベーションたりうる。
イノベーションの起こし方
イノベーション、すわなち認識されていない課題とは、解決しうると思われていない、すなわち諦めている問題であるという。
そのため、この諦めている問題を読み解くには市場調査は使えない。
ではどうするか?
高岡氏は、新しい現実を見て、自身で考え、顧客に対してどのような問題を考えるか?だという
マーケティング・フレームワーク「NRPS (New Reality Problem Solution)」
高岡氏が薦めるマーケティングフレームワーク「NRPS」
これはNew Reality Problem Solutionの頭文字をとって名付けられた方程式。
ネスレ全社員と共有しているとのこと。
このNewReality(新しい現実)は、変化をもたらす新しい現実。
ネスレでいうと、人口動態の変化に着目。
人口は減りながら、世帯は増える、すなわち核家族化。
①コーヒーは1人で個別楽しむものに。
②共働きが増え、コーヒーの飲用シーンが外になりがち。
これらから、問題を
①コーヒーを飲むための準備(ひとり分のお湯を沸かすこと)が面倒
②職場で飲まれるコーヒーの選択肢が乏しい(自販機or外)
その解決策を以下の内容とビジネスモデルとした。
①バリスタ
②ネスカフェアンバサダー
新しい現実から、その現実が連れてくる一見解決不可能そうな課題を見つけ出し、デジタルやAIなど力を使いながら解決していく。
それがこれから日本に必要不可欠なイノベーションの起こし方ではないか?と高岡氏は話をし、講演は終了しました。
coro的、講演の注目点
一番の注目点は「NRPS」でした。
マーケティングとしては、現実を見て、課題を考えよ。という、
観察→仮説→思考 というようなプロセスに沿った、ともすればよくある方程式に思えます。
しかし、"新しい現実"がやはり面白いです。
ターゲットの変化に着目する、意外とない視点でした。
一足飛びにインサイトに行くのではなく、人口動態や社会環境などから着目し、
そこから諦めていそうな課題を抽出・見つめるというのは、
ネスレに限らずいろいろな会社で適用できそうな形で施策を考えるまでの再現性が高いのではと考えています。
というのも、どこかで読んだのですが、人口動態や社会環境の変化予測は確度が比較的高かったはずなので。
また、先に手を付けてローンチしたほうが有利だと思うので、やはり速さがカギになると思います。
さらに、施策案がよければ必ず成功するか?の点でいうと、それだけではもちろんなく。
講演の中では、ビジネスモデルと戦略(バリスタを安く売って、ポーションで儲ける)の言及もありました。
また、記憶が確かなら、コミュニケーションの上でもそれなりのことをして認知をとっていたと思います。
結局、イノベーションとなるような解決策、その実現にはデジタルの力が必要不可欠です。
一方、それだけで成功するか?といえば、そんなことなく。
顧客にとどけるためには、これまでのコミュニケーション論なども十分に必要になってくると思います。
この新しい現実が起こす変化に着目して課題を抽出するというのは、
特に新規事業等のアイデア出しやコミュニケーションのアイデアだしにも使えるような気がしました。
高岡浩三氏の代表的な著書
この講演の内容に興味ありましたら、高岡浩三氏の著書もぜひご覧ください。